DRIES VAN NOTEN(ドリスヴァンノッテン)が30年以上も独自のスタイルを貫く理由

2018.12.08

https://www.vogue.co.jp

 

今年は映画も公開されたりと、話題も多かったドリスヴァンノッテン 。

 

ブランドとしては30年以上、コレクションは100回を超えるほどの長い歴史を持つにも関わらず、モードの早い潮流に飲まれず「消費」されないものづくりを続けています。

 

先進的なクリエイションが目に留まりやすいモード業界にありながら、淘汰されずその地位を手に入れるのはどのブランドもが目指すところであるでしょう。

 

これを可能にしているのはドリス氏の企業家としての手腕。

そしてひたむきにものづくりに向き合う真摯な姿勢。

今回はそんなドリスヴァンノッテンのものづくりの根幹に迫りたいと思います。

 

読み終わったころにはドリスヴァンノッテン がもっと身近に感じてもらえるはずです。

 

また、今回の記事の作成にあたって、DRIES VAN NOTENの直営で働く友人Sに取材協力など多大な力添えをいただきました。

この場を借りてお礼をいたします。

 

 

生い立ちと少年期

ドリスヴァンノッテンのデザイナーとしての人生は彼の家系も大きく影響していたのかもしれません。

テーラーの曽祖父・メンズブティックオーナーの祖父を持ち、彼の父もその伝統を継ぎデザイナーズのブティックをオープンします。

祖父が経営していたブティックは当時では画期的なオートクチュール(仕立て服)とプレタポルテ(既製服)を織り交ぜた店。

父もそれをさらに進化させ、機能的なファッションだけでなく、エンターテイメント性を提供するという革命的なコンセプトを持ったブティックを設立しました。

 

そんな家系に生まれたドリス少年。

もちろん服の世界に惹きこまれていきます。

 

もともとは6歳から16歳までブルジョワの男の子を医師や弁護士へと育てる機関にいたドリス少年でしたが、エリートコースまっしぐらなレールに対し彼自身も退屈だったようです。

ラテン語の勉強よりも父親の元でビジネスを学ぶ楽しさに気づき始めます。

 

そして、当時の司祭である先生からも環境変えることを勧められ、12歳で大学までの課程を終えます。

彼にとってこの機関での勉強は、ビジネス学位を取るためであり、父親の世界に飛び込む準備期間として捉えていました。

一般的に日本だと小学6年生の頃です。恐ろしいですね。

 

そして1977年、アントワープのロイヤル・アカデミー・オブ・ファイン・アーツに入学します。

▲写真中央は若き日のドリス青年。

 

当時パンクカルチャーがニューヨーク・ロンドンを襲った年でしたが、学校の教育方針としては文化的な波に左右されない伝統的な方法で運営されていました。

 

ただ、このパンクカルチャーが彼に与えた影響は、洋服を作る上で一つのルーツとなるほど重大な出来事でした。

ここについては後ほど詳しくお伝えいたします。

 

 

アントワープに在学したドリス青年は勉学に励むかたわら、子ども服のデザインをはじめます。

これはお金を稼ぐことが目的ではなく、生産側(機屋や縫製工場)、販売側(ショップ)との接点をつくることでした。

のちにフリーランスで活動する際にこのコネクションが役立っていきます。

その後もさまざまな企業で仕事を経験し、実績を積んでいったドリスは規模が大きくなってきた事業を管理するため会社を設立します。

 

ドリスの知名度が大きく拡大するのは学校卒業後に参加したスピンドルコンペティションというファッションコンクールでした。

ただのコンクールではなく、ベルギー政府とベルギーの繊維研究所TTCBによるものすごくしっかりしたコンクールで国際的なデザイナーやジャーナリスト・コンサルタントなどすべてのファッション関係者が有益な関係になりましょう、をテーマにしたものでした。

そこで認められたドリス。日本などにも貿易を可能にし、どんどんビジネスを拡大していきました。

 

その後は軌道に乗りはじめたダークビッケンバーグやアンドゥムルメステールらと共にロンドンコレクションに参加。

爆発的なインパクトこそ残せなかったものの、これを境にアントワープ発の有望なデザイナー6人を総称してAntwerp Six(アントワープシックス)という呼び名が定着していきました。

AnOther Magazine

名付け親はニューヨークタイムズらしいです。しかも6人一括りのフレーズをつけた理由がデザイナーの名前を誰も発音できなかったからという。

 

マルジェラも似たようなエピソードを書いていた気がしますね。

取材をしたいとオファーの連絡が来るがことごとく自分の名前のスペルが間違っていた、てきな。

 

その後も着々と取引先を増やしていき、ブランドとしての基盤を確立していきました。

 

DRIES VAN NOTEN、デザインの流儀

ドリス自身が大切にしている服作りの考え方・流儀を知ることは30年間ものものづくりを紐解くうえで近道になりそうです。

ここではドリスの服作りへのマインドを見ていきましょう。

 

アクセスブルとウェアラブル

原則になっている考え方は、アクセスブルとウェアラブルの2つ。

順に説明していきます。

 

アクセスブル

ドリスは衣服を二次元的部分から呼び起こす才能があります。

要はパターンメイキングやディテールをこだわることで極限まで動きの流動性を追求しています。

彼が完璧主義である所以はここにあるのかもしれませんね。

 

ウェアラブル

衣服は自分の身体性に適応しなければ意味を持たないという考え方のもと、現代のライフスタイルに美しいデザインを提案することがドリス自身の役割と考えています。

パターンを凝ったからといってその人にきちんと合わなければ空想上だけ完璧な洋服、になってしまいますもんね。

この原則のもと、ドリスの洋服はデザインされます。

 

そしてもう一つ欠かせない要素が折衷主義という考え方。

 

折衷主義とは異なる哲学・思想体系の中から心理あるいは長所を抽出し、折衷・調和させて新しい体系を作り出す主義のこと、だそうですがつまりはそれぞれの良いところをかけ合わせてよりよくしよう、というものですね。

 

世界で起こっていることをドリスのフィルターで翻訳し、それを新しいものづくりへと昇華させます。

のちにもゆっくりと触れますが、ドリスにはオリエントな雰囲気やエスニックなディテールを盛り込んだアイテムは多く、それらの元にもなっている考え方です。

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東洋と西洋をあわせるにしてもただ単にミックスしたデザインではなく、異なる文化や哲学・思想の良いところを抽出しそれを取り入れて新しいもの生み出します。

この塩梅(あんばい)はすごく難しいところ。

それぞれの要素を入れすぎるとごちゃごちゃしたものになってしまいますし、淡白でコンパクトな仕上がりだと表面的な折衷に捉えられかねません。

これに挑戦することは、1シーズンの実験的な試みでは困難でしょう。

実際、ドリス自身も「気まぐれな短期的挑戦よりも長期的な開発」と語っています。

 

綿密な素材合わせ

映画の1シーンでも触れられていた素材合わせ。

−「コントラストと緊張感を与えるために毎回素材合わせを繰り返す。この服作りのやり方は僕の人生を反映しているね。」−

出典 : ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男

 

このあたりにも30年以上評価されている理由がありそうですね。

 

 

DRIES VAN NOTENのインスピレーション

旅からのインスピレーション

GAHAG

これはまさに先ほど触れた折衷主義ですが、そのマインドが色濃くあらわれたコレクションが多かったことから「エスニックデザイナー」や「カルチャーの探検家」「旅行家」と揶揄されたりもしていたようです。

それはたとえコレクションの中に盛り込んでいなくても言われていました。

 

実際インスピレーションを得るためにいろいろな場所を訪れてはいたようですが、現地に行ってすべてを目で見て体験してしまうことはしないようにしていたようです。

そうしてしまうと完全にその体験に引っ張られてしまい、デザイナーというフィルターを通さずに服が完成してしまうから。

ドリスはそれを恐れたようですね。

 

ドリスの服づくりはまず想像力をフルに使ってその場所、その文化に思いを馳せます。

時には物語の主人公が旅をする姿を想像しイメージを膨らませていくことも。

主人公は別の時代・別の国の人間で、本来なら交わることのなかった要素同士を絡み合わせたりしてデザインに起こしていきます。

 

自分のかわりの別の誰かに世界中を旅させて作っていく服はいつも新鮮。

同じ軸をもって長くブランドをしていくことは、ともすればマンネリ化しかねませんがインプットやアウトプット方法を工夫することでそうなるのを防いでいます。

 

そんなドリスが今も生まれ育ったアントワープ住んでるというのは面白いですよね。

考えてみれば自分のホームが明確にあるからこそ他の文化や地域と折衷できるわけですね。

 

 

からのインスピレーション

https://medium.com/@sunglasscurator/dries-van-noten-magical-lier-home-706df1e87ebc

映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」でも触れられていた内容ですが、ドリスと花は切っても切り離せません。

 

その好例として、2008年春夏レディースコレクションではYves Saint Laurent(イヴ・サンローラン)の1980年秋冬コレクションのフラワーステンシルブルゾンからインスピレーションを受けた柄のアイテムが発表されています。

花はドリスの服づくりにおいて大切なインスピレーション源なのですね。

 

実際、彼の暮らしは花抜きでは語れないほどに花と密接な関係になっています。

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1840年代に建てられた豪邸にはものすごく広い庭があり、そこには色とりどりの花たちが咲いています。

バラとダリアの庭園や50種類のアジサイ、鮮やかな花以外にも森林地帯などもあり一年中色どりがある素敵な庭です。

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ここに咲いている花から着想を得たデザインは、シーズンを問わずアイテムに反映させています。

2010年春夏コレクション

 

2014年春夏コレクション

 

2014年春夏コレクション

花から着想を得たデザインはもちろん多いのですが、そこよりも花を大事にする思いがクリエイションそのものに反映されていること、これこそがドリスの魅力ではないかな、と思います。

 

職人との関わり方

刺繍

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ドリスが刺繍に興味をもつきっかけは彼の母からの影響があったように思われます。

 

レースや刺繍を愛する母は父と同じようにブティックを経営していました。

そこには刺繍が施されたベルギーリネンがあり、彼の心を大きく揺さぶったことでしょう。

 

アイロンがけするだけで台無しになるほど精密で繊細なもの。

けれどその繊細さが人を魅了することを知りました。

 

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今でこそインドの刺繍技術を取り入れているブランドは数多くありますが、25年以上前から職人の手仕事に注目し現在に至るまでその関係性を続けているブランドはほんの一握りでしょう。

 

カルカッタを拠点とする3つのメーカーのうち、2つは未だにドリスのために生産を続けています。映画のシーンにもあったインドに駐屯スタッフを置き、細かくメーカー側に指示を下し、試作品をチェックするという徹底ぶり。

 

その関係性はビジネス的な付き合いではなく、もっと芯の部分でつながっています。

 

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ドリスは職人たちの生活・インドの伝統と産業を守るための使命があり、職人たちにはドリスヴァンノッテンのブランドのイメージをともに作り上げる使命があります。

 

そのため、毎シーズンのコレクションには必ず刺繍のアイテムが作られます。

それがドリスヴァンノッテンを象徴するものとなり、職人の技術と生活を守ることにもなっています。

 

DRIES VAN NOTENの販売形式

コレクションショーが体験できるトランクショー

他のハイブランドとの大きな違いに、ユニークな販売形式があります。

通常、ブランドはコレクション発表ののちに取扱店舗に商品を供給してお客さんはその服を見て購入します。

コレクションは実際にみんなが見にいけるわけではないので、基本的にはお客さんは事前に見たコレクションを頭に思い浮かべながらラックにかかっている服を見ていくことになります。

 

ドリスが行う販売形式はみんなが実際にショーを見て服を買うことができるトランクショー形式。

海外から招いた実際のモデルを店内をランウェイに見立ててお客さんの目の前を歩きます。

 

ハンガーに吊った状態ではなく人間が着ている状態で服を見られる上、そのモデルが目の前を歩いてくれるイベント。

さらに本国のスタッフが商品の解説やスタイリング方法など全て説明してくれます。

その数、メンズウィメンズおよそ10LOOKずつという豊富さ!

 

めちゃめちゃテンションあがりませんか??

 

この販売形式は、ブランドとして日本のお客様にきちんと届けたいというドリス自身の意向でもあるようです。

顧客さん向けのイベントなのでいきなりの飛び入り参加は難しそうですが、ドリスヴァンノッテンというブランドにどっぷり浸かるにはまさに理想のイベントでしょう。

 

 

DRIES VAN NOTENのアイテムについて

この記事を書く前、ドリスヴァンノッテンについてより興味が湧いたのがドリスの服にはすべて名前がついている、ということを知ったときでした。

 

例えばドリスがよくコレクション終わりで履いているこちらのパンツはPhillipという名前で、毎年必ずリリースされている定番パンツです。

太すぎず細すぎない緩やかなテーパードを利かせつつ、時代に左右されないシルエットが特徴のパンツ。

素材はコットンもしくはウールで展開しています。

ウエストは調整可能なアジェスター仕様で裾は5cm幅のダブル仕上げと、明確な決まりがあったりします。

 

もうひとつ、こちらのRAYMOREというモデルは様々なシーズンで発売されているモデルですが、今季の2018年秋冬コレクションではシーズンの目玉だったマーブリング加工が施されたコートとして登場します。

コレクションのアイテムにもちゃんとすべて名前があります。

 

そのほかの2018年春夏コレクションのアイテムにももちろん名前がついています。

こちらのスウェットはHALXTON PRINT EYE。

パンツはPENDER BISというモデル名です。

 

こちらのルックはコートはREEDLEY、ニットはMADDOX、パンツはPATRINI SHORT。

素材やディテールこそ違いがあるものの、1シーズンきりの使い切りの形ではないというところに愛着が湧きますね。

 

 

またVINNYというモデルはなんと16SS、16AW、17SS、17AWと連続でコレクションルックに使用されています。

(上から順に16SS、16AW、17SS、17AW)

シーズンによってVINNY-Rev(リバーシブル仕様)になったり、VINNY-Emb(刺繍)になったりと変化しながらドリスを象徴する力強いアイテムに使われています。

 

モデル数は果てしなく多いのですべてをご紹介はできませんが、ドリスは大量のモデルからシーズンテーマに合わせてピックアップしリリースしています。

 

とても興味深いと感じたのが、定番商品にだけ名前がついている、とかではなくすべてについているという点。

すべて「消費」されてしまわないように名前をつけて大切に生み出している丁寧さを感じました。

 

しかも、30年かけてモデルも多く作られているのでシーズンのものづくりはテーマやテクニックに集中することができます。

ワイドなモデルもスリムなモデルもあるので、テーマや伝えたい内容に合わせてモデルを選ぶことができます。

 

定番品番を多く設けているものはコレクションブランドでここまでしているブランドはなかなかありません。

 

 

DRIES VAN NOTENのモデル名解説

アイテムにつけられる名前たちにはルールがあります。

まず、名前はアイテムごとに同じアルファベットではじまります。

ジャケットだったらBから、パンツならPから、といった具合に。

 

ひとつ例を出して見て行きましょう。

この下の写真のタグで説明すると

上から2行目の一番左の単語「BERKLEY」がモデル名です。

DRIS VAN NOTENのタグをお手元にお持ちの方はぜひ見てみてください。

 

 

ここからは箇条書きでモデル名をご紹介します。

全ての画像はご用意できませんので、気になった方は検索していろいろ見てみることをおすすめします。

 

パンツ

●phillip

●Patrini

●Penn

●Panthero

●Peeler

●Parade

●Peyton

●Payson

●Phil

●Pender

●Perkino

●Python

●Pernod

●Perkino

 

ニット

●Mitch

●Midday

●Mikhos

●Mimic

●Minty

●Mikado

 

ジャージー

●Haltley

●Haagen

●Habson

●Habert

●Halford

●Halcott

●Halxton

 

シャツ

●Coenie

●Curley

●Corbin

●Calton

●Council

●Cabana

●Canis

●Crudo

●Carnegie

 

ジャケット

●Brody

●Burness

●Brendan

●Blaine

●Bilbao

 

ブルゾン

●Vulker

●Voice

●Vinny

●Verreli

コート

●Raymore

●Revell

●Remington

 

DRIES VAN NOTEN着用の芸能人

岡田将生

2013年秋冬コレクションのコートを着用。

 

2013年秋冬コレクションのペイズリージャケットを着用。

 

2014年春夏コレクションのジャケット、パンツを着用。

 

三代目J Soul Brothers

全員2018年秋冬コレクションを着用。

 

松本潤(嵐)

2015年春夏コレクションのカットソーを着用。

 

二宮和也(嵐)

2016年秋冬コレクションのシャツを着用。

 

亀梨和也(KAT-TUN)

2014年春夏コレクションのジャケットを着用。

 

Justin Bieber(ジャスティンビーバー)

2016年春夏コレクションのシャツを着用。

 

Kanye West(カニエウエスト)

2015年春夏コレクションのカットソーを着用。

 

Luka Sabbat(ルカサバト)

2018年秋冬コレクションのシャツを着用。

 

 

まとめ

映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」のワンシーンにて、事業家でありファッションアイコンでもあるアイリス・アプエル(97)はドリスについて

FASHION PRESS

−インタビュアー: ドリスのような(本質的な)デザイナーは消えつつあると?

アイリス:  彼だけよ。他は絶滅した。新規の補充もないわ。だから私にとって彼は宝物なの。大切にしなくちゃ。−

 

このように語っています。

 

歴史あるコレクションブランドでありながら、一時的な流行に流されず独自の立場で本質をついた服づくりをしている数少ないブランドだと思います。

職人を大切にした服づくりを続けていたからこそ長く愛されるブランドになっているんですね。

 

ものづくりとして独立した立場を保ち、クリエイションを続けることの難しさと大切さ。

これからドリスヴァンノッテンというブランドを見る上で、そういったところにも思いを馳せながら服をみてもらえると幸いです。

 

 

 

出典

https://www.asahi.com/and_w/fashion/SDI2015112737611.html

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