2020/05/05追記・編集
今回はVivienne Westwoodについて。
今や日本でも高い知名度・人気を誇るヴィヴィアンですが、1970年代・ユースカルチャーの扇動者としてヒッピースタイルが中心だったイギリスでパンクロック文化の礎を築いた立役者でもあります。
どんな背景があり、どんな名作が生み出されたのか。そしてそのヴィヴィアンウエストウッドにどんな変遷があったのか。
ヴィヴィアンは根強いファンの方も多く、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今一度草創期のコレクションを時系列で振り返ってみましょう。
1981SS Pirate
ヴィヴィアン初のコレクションを発表したシーズン。
ロンドンのオリンピア海賊の黄金時代をイメージした、ダンディな海賊を思い起こさせるコレクションでした。
スクイグル柄は今でもヴィヴィアンのモチーフになっているほどの名作ですね。
アダム&ジアンツ、カルチャークラブのボーイジョージ、デュランデュランなどの「ニューロマンティック」と言われる音楽ジャンルの人々も数多く着用したことでも有名です。
スグイグルは当店にも1着ございます。
パイレーツブーツなども現在も定番でリリースされていますね。Dollarにも入荷がありますが、毎回すぐ売り切れます。
ヴィヴィアンのコレクションの中でも有名&人気が高いシーズンではないでしょうか。
1982AW BUFFALO (Nostalgia of Mud)
コレクション名「バッファロー」。
大きくてボロボロのスカートや羊革のジャケットなど、そのすべてが泥の色に染め上げられていてノスタルジックな雰囲気が表現されていました。
このコレクションは別名「ノスタルジア・オブ・マッド:泥の郷愁」とも呼ばれますが、この由来は、同年1982年3月にオープンしたヴィヴィアンの2店舗目のブティックの店名からきています。
考古学の発掘現場のようにデザインされたブティックで、壁には世界地図が張られ、内部はブーズー教の道具によって泥が積み上げられたディスプレイが施されていました。
だからこのシーズンは泥色に染められているんですね。
有名なアイテムはバッファローコートやマウンテンハットなど。
マウンテンハットは近年も、ファレルウィリアムスの着用などもあってブームになりましたね。
ちなみにこのコレクションはパリコレクションで発表されました。
パリコレクション参加は、イギリス人デザイナーとしてはマリークワント以来2人目のことだったそうです。
1983AW Witches
「Witches(ウイッチーズ:魔法使い)コレクション」。
このコレクションは、ニューヨークのグラフィックアーティスト「キース・ヘリング」の作品から影響を受けて誕生したコレクションです。
アメリカで彼の作品を見たマルコムマクラーレンは彼のアート作品が魔法の記号や象形文字のように見えたためコレクションのテーマが「Witches(魔法使い)」になったそう。
特大のジャケットと特大のコートが特徴となっていて、ジャガードのボディ、チューブスカート、魔女がかぶるような尖った帽子などと組み合わされていました。
1984AW CLINT EASTWOOD
テーマは「クリントイーストウッド」。
「たまには実際には存在しないファンタジックな人々に思いをはせる必要がある」というコンセプトを基に、ウエスタン映画への憧れから生まれたコレクションでした。
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と言いつつコレクションは近未来なデザインと柄が多いという。
東京のネオンサインからイメージされたといわれる、イタリア企業のロゴマークをふんだんに使ったデザインも注目を集めました。
イタリアに移住したことでデザインに影響を与えるものが変化していったように感じます。
この1984年という年はヴィヴィアンがストリートから伝統へとファッションに対する方向性を変えた重要な年といわれています。
「伝統をもって未来を創る」というヴィヴィアンのクリエイティビティ(創造性)を象徴する「ORB(オーブ)」のブランドロゴもこの頃から使われはじめています。
1985SS Mini Crini
ビクトリア朝時代に着られていたクリノリンから余分な要素を取り除き、さらにシュシュを組み合わせた、ミニ丈のクリノリンをリリース。これを「Mini Crini(ミニ・クリニ)」と名付けました。 80年代の主流であった男性的なショルダーパッドとタイトなヒップラインを否定した、セクシーかつチャイルディッシュなデザインが特徴でした。
本物のクリノリンはこんなやつです。
着るのものすごく大変そうですね。
バレエの「ペトルーシュカ」という演目からインスピレーションを受けたとも云われており、名作ロッキンホースもこの年にリリースされています。
確かに「バレリーナ」というモデル名もありますね。
パンクやバイカーなど、ストリート・ユースカルチャーをコンセプトにした服作りから歴史や伝統を再解釈する服作りにシフトしていった様子がよくわかるコレクションですね。
このシーズンで用いられたドットや星柄はディズニーをイメージしているそうです。
1987AW HARRIS TWEED
英国王室と伝統的な衣服に対してのこだわりを表現したコレクション。女王が子供時代に身に着けていたコートからイメージされたデザインのコレクションで、作品の多くがVivienne Westwoodのクラシック・コレクションとして現在にも受け継がれるものでした。
ハリスツイードを使用したジャケットだけでなく、サヴィルロウで仕立てられたジャケットやジョンスメドレーとのコラボニットなどもリリースされており、イギリスの伝統にとことんフィーチャーしたコレクションになっています。
ジョンスメドレーコラボのニットにはJay Bird(カケス)という鳥の刺繍が施されています。
おそらくですがラブジャケットの初出もこのシーズン。
Harris Tweed × Vivienne Westwoodのラブジャケット、やばいですね〜。
そしてPAGANへ
HARRIS TWEEDのコレクション発表後、1988年、「BRITAIN MUST GO PAGAN(英国は異教徒に向かう)コレクション」を発表します。
英国の伝統と異教徒の要素を組み合わせた、ある意味、取捨選択的ともいえるような提案となっていて、「英国の伝統や文化に対する尊敬」と「性の自由」という矛盾するものを表現したコレクションでした。
この頃のコレクションから、ヴィヴィアンは「伝統をもって未来を創る」という彼女のデザインコンセプトを明瞭に打ち出す創作活動をするようになってきます。
もちろん、元々の「セクシーさやタブーに挑戦するという姿勢」は持ったままですが。
1988年から1991年までの期間を「The PAGAN Years (異教徒の年)」と呼び、伝統・歴史・文化を重んじたクリエイションが中心になってきます。
H・G ウェルズの小説のタイトルにちなんでつけられた、中世の鎧に触発された関節式ジャケットなどリリースした1988AW Time Machine (タイムマシン)
ワトーの絵、イタリアの仮面劇「コメディア・デラルタ」、ロシアのバレエ団「バレエ・リュス」など、文化的な要素からインスパイアされた1989AW Voyage to Cythera (ヴォヤージ・トゥ・キティラ)。
18世紀フランスを懐古するような1999SS Pagan V (ペイガン II )、
織物を切断して装飾的なパターンを作り出す歴史的技法を用いた1991SS Cut and Slash (カット・アンド・スラッシュ)
ヴィヴィアンの歴史を語る上で欠かせないコレクションたちです。
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最後は駆け足でお伝えしましたが、ヴィヴィアン草創期のコレクションたち、いかがだったでしょう?
いつかコレクション発表以前のヴィヴィアンについてもコラムを書ければな、と思っています。
Writer:Yusuke Omura
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